イスラエル軍によるガザ地区への地上進攻が始まってしまった。病院や学校や避難場所に対してもパレスチナ人への無差別な攻撃が行われている。この事態を見るにつけ、1943年に起きたワルシャワ・ゲットー蜂起を思い出してしまう。第二次世界大戦中ヨーロッパの大半を占領したナチス・ドイツは占領地域のユダヤ人を何カ所かのゲットーと呼ばれる壁に囲まれた狭い地域に閉じ込め外部との交流を遮断してしまう。
そして、これらのゲットーの中で、ワルシャワのゲットーに封じ込められたユダヤ人は自らの生存をかけて大規模な蜂起を行ったのだ。本来ゲットー内への武器の持ち込みは非常に困難であったが、それでもゲットー内のユダヤ人レジスタンス組織はナチスに対抗するため密かに武器を持ち込んでいた。これらの武器装備は強力なナチスの軍隊の装備と比較すると余りにも貧弱であり、外部からの補給も期待できない状態であったが、鎮圧のためゲットー内に進行して来たナチス軍に対して約一か月に渡って勇敢に戦った。
これまでの状況を見ると、ゲットー内のユダヤ人がガザ地区の塀に囲まれたパレスチナ人に、進行して来たナチス軍がイスラエル軍に見えてならない。
もちろんイスラエルの人々は現在のガザ地区のパレスチナ人の方が第二次大戦中のゲットー内のユダヤ人より健康で文化的な生活を営んでいると言うであろうが、1940年代と2020年代では基準が違うだろう。自分達の住んでいた土地を追われ塀に囲まれた狭い地域に追いやられ自由が束縛されている事は事実だ。
今回の紛争の発端となったハマスの暴挙は許しがたい犯罪である。しかし、戦争に正義は無いのだ。戦争には悪しかない。そこに在るのは勝者が正義で敗者が悪という残酷な現実しかないのだ。例え何千人何万人殺しても勝者が裁かれる事は無い。裁かれるのは敗者だけだ。もし、ナチスドイツが最終勝利者になっていたら、レジスタンスやパルチザンは全てテロリストとして断罪されていたであろう。
この愚かな勝者の正義・力の正義の繰り返しをいい加減止めにして欲しい。