プーチン死して戦争は残る

健康上の理由などによりロシアのプーチンの大統領在任は長くないとの観測がある。

今回のロシアによるウクライナ侵略はプーチンの戦争であるから、プーチンが居なくなれば、戦争は終わるとの観測が在るが、そうも行かないだろう。

プーチンが居なくなることは、必要条件であるが、十分条件では無い。戦争は簡単に始められるが、終わらせることは簡単では無いのだ!大東亜戦争は軍部が独断専行で始めた戦争で在ったが、軍部で終わらせることは出来なくなり、天皇陛下の御聖断によるしか無かった。ドイツも国土が連合軍により完全に蹂躙され、ヒトラーが自殺するまで戦争を終わらせることは出来なかった。今回の戦争ではロシア領土は1ミリも進攻されていない。

今回の終戦の形として、①ロシア完全勝利(クリミア半島のロシア領有化の確定と場合によってはドニエプル川以東のロシアへの割譲)②ウクライナの完全勝利(2014年のクリミア進攻以前の国境に戻し、ロシアに侵略による被害の弁済を求める)③その両者の間となる。

①に関しては、ウクライナの民意や武力による現状変更を認めない欧米日が承認することは無いだろう。②に関しては、ロシア国民の80%が今回の侵略を支持していることが問題となる。暴動が発生し、ロシア国内は収拾のつかない混乱状態となるだろう。③に関しても上記の理由により何処で線を引くかの落し処を見つけるのは困難であろう。

ノヴォロシアと沿海州

現在の中華人民共和国の領土は、かつての清帝国の領土をおおむね継承している。清帝国は中国東北部に居住していた女真(ジュルチン)族が明帝国を滅ぼして設立した征服王国であることは歴史に詳しい読者ならご存じのことであろう。

女真族は建州女真(マンジュ)、海西女真(フルン)、野人女真の三大勢力に別れていたが、建州女真に生まれたヌルハチが統一して、金国(アイシングルン)を建国し、やがて明帝国を征服し、現在の中国の版図を形作ることになる。言わば中国東北部は現在の中国の発祥の地と言える。ちなみに中国東北部全体をさす満州と言う呼称は、建州女真のマンジュから来ている。

さて、現在の中国発祥の地とも言える女真族の居住していた地域は、今どうなっているかかというと、かなりの部分がロシア領となっている(一般に沿海州と呼ばれている)。これは、1858年の璦琿(アイグン)条約により清国から割譲した結果であり、ウラジオストックやハバロフスクはこの地に建設された。この清国からの割譲の経緯は、暴力団でもこんな無法なことはしないだろうと言うような恫喝によるものであったが、ここでは詳細は控える。

現在ウクライナ侵略中のプーチンが侵攻の大義として、かつてこの地は、ノヴォロシアというロシア帝国の一部であったとしているが、その理屈で言えば、その当時、沿海州一帯は中国の一部であり、従って、中国にはこの地に侵攻する権利が有り、プーチンは甘んじてそれを受け入れる義務が有ることになる。

現在ロシア軍はウクライナ侵略に軍備を裂いており、失地を回復する絶好のチャンスかもしれない。