現在の中華人民共和国の領土は、かつての清帝国の領土をおおむね継承している。清帝国は中国東北部に居住していた女真(ジュルチン)族が明帝国を滅ぼして設立した征服王国であることは歴史に詳しい読者ならご存じのことであろう。
女真族は建州女真(マンジュ)、海西女真(フルン)、野人女真の三大勢力に別れていたが、建州女真に生まれたヌルハチが統一して、金国(アイシングルン)を建国し、やがて明帝国を征服し、現在の中国の版図を形作ることになる。言わば中国東北部は現在の中国の発祥の地と言える。ちなみに中国東北部全体をさす満州と言う呼称は、建州女真のマンジュから来ている。
さて、現在の中国発祥の地とも言える女真族の居住していた地域は、今どうなっているかかというと、かなりの部分がロシア領となっている(一般に沿海州と呼ばれている)。これは、1858年の璦琿(アイグン)条約により清国から割譲した結果であり、ウラジオストックやハバロフスクはこの地に建設された。この清国からの割譲の経緯は、暴力団でもこんな無法なことはしないだろうと言うような恫喝によるものであったが、ここでは詳細は控える。
現在ウクライナ侵略中のプーチンが侵攻の大義として、かつてこの地は、ノヴォロシアというロシア帝国の一部であったとしているが、その理屈で言えば、その当時、沿海州一帯は中国の一部であり、従って、中国にはこの地に侵攻する権利が有り、プーチンは甘んじてそれを受け入れる義務が有ることになる。
現在ロシア軍はウクライナ侵略に軍備を裂いており、失地を回復する絶好のチャンスかもしれない。