暴力不寛容社会

今年のアカデミー賞では、濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を受賞し、2009年の滝田洋二郎監督の「おくりびと」以来、日本映画としては13年ぶりの快挙です。以前からカミさんと見に行こうと言いつつ未だ見に行ってないのですが・・

もう一つ今年のアカデミー賞で作品表彰以上に話題となったのが「ウィル・スミスの殴打事件」でした。

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帝国主義の終焉

かつて大英帝国が最も発展し栄華を極めたのはヴィクトリア女王(1819年5月24日 – 1901年1月22日、英国女王としての在位1837年6月20日 – 1901年1月22日)の時代であった。この時代世界各地に植民地を得て’太陽の沈まぬ国’と豪語した。

このヴィクトリア女王の在位中に悲惨な事件が起きている。大英帝国の本拠である大ブリテン島の西側にアイルランド島が在り、北の一部を除いてそのアイルランド島の大部分を占める国家がアイルランド(アイルランド共和国)である。このアイルランドは長い間東隣の英国から圧政を受けていた。アイルランドで収穫される小麦は全て英国に収奪され、アイルランド国民の飢えを満たすものはジャガイモしか無かった。ところが、1845年に始まったジャガイモの疫病はアイルランド国民の唯一の主食を奪った。餓死者が続出したが、それでも英国はアイルランドに小麦を返すことは無かった。約4年間の疫病の期間中に100万人以上のアイルランド人が餓死したと言われている。多くのアイルランド人は祖国に見切りを付け、新天地(アメリカ合衆国)に移り住んだ。この中に後の合衆国第35代大統領を送り出すことになるケネディ家も含まれていた。

この英国のアイルランドでの圧政の原因として宗教問題(アイルランドはカソリック、英国は英国国教会)もあると考えられるが、ともかく世界各地から収奪する利益により英国が繁栄を極めていたのは間違い無い。すなわち植民地経営のコストとプロフィットを比べればプロフィットが勝っていた状態であった。

第二次世界大戦以前の日本は大変貧しい国であった。冷害の続く東北地方では、自分の娘を売って食いつなぐ農家が続出した。一部の村役場ではこの人身売買の斡旋が行われていた。

東北地方だけで無く、山崎朋子著のノンフィクション「サンダカン八番娼館」に描かれている様に九州の島原地方からは’からゆきさん’と呼ばれる娼婦として売られていく娘は後を絶たなかった。また、こうの史代の漫画「この世界の片隅に」に登場する遊女達の様に貧困のため身売りした娘達は日本全国に大勢居た。

第二次大戦以前、日本は世界地図上では広大な地域を支配しており、欧州の植民地宗主国に劣らず、それ以上にこれらの地域から収奪したが、日本が豊かに成る事は無かった。植民地支配に対するコストとプロフィットが全くあわなかったのだ。敗戦により、これらの広大な支配地域は全て失ったが、同時に植民地支配に必要なコストも無くなり、軍隊という消費するばかりで何も生産しない100%コストセンターを手放すことが出来、海外との貿易という極めてローコストな手段により最大限のプロフィットを享受出来るようになり、一時は米国に次ぐ世界第二位の経済大国にまで成長した。第二次大戦後、日本だけで無く欧州諸国も植民地経営のコストとプロフィットがあわなくなり、多くの支配地域が独立を果たすことになる。まさに帝国主義時代の終焉であった。

現在、ロシアはウクライナへの侵略を続けており、軍事力では圧倒的に優位なため、核兵器の恫喝によりウクライナを征服する事は可能かも知れない。しかし、ウクライナを支配し、かつてのソ連帝国の様に広大な地域を支配しても、ロシアに対する世界の制裁は更に強まり、満足な貿易も行えないようになり、ウクライナ支配に必要なコストの増大と貿易減によるプロフィットの減少により国力はどんどん低下して行くことになるだろう。

プーチンの目指すかつてのソ連帝国は広大な国土と強力な軍事力は持っていたが、GNPは当時のオランダ程度であったと言われている。国民の生活は決して豊かでは無かった。ゴルバチョフ以降の改革開放により自由主義経済体制で貿易を続けていれば、更に豊かな国となるチャンスは在ったのに、時代錯誤の帝国主義的野望を剥き出しにしたことにより、北朝鮮の様に核兵器を持つ最貧国の仲間に加わって行くことだろう。

シベリア抑留の記憶 -ウクライナ市民の強制移動

第二次世界大戦後、ソ連(現ロシア)は満州、樺太、千島在住の日本人を強制的にシベリアに移動させ、酷寒の原野で奴隷的労働に従事させました。この中には軍関係者以外に一般人の女性や子供も含まれていました。一般に日本の終戦は昭和20年8月15日とされていますが、この時点で千島列島の占領が終わっていなかったソ連軍は9月3日まで一方的攻撃を続け、その後住民を強制連行したのでした。

現在ウクライナを侵略中のロシアは、マウリポリ在住の市民を強制的にロシア国内に移動させているとの事です。移動後、ロシア国内で適当な仕事を与えるとしていますが、職業選択の自由の無い専制国家らしい発想で、第二次大戦後のシベリア抑留を連想させます。

戦勝国が敗戦国の住民を自国に連れ去り、奴隷にするという行為は紀元前の考え方であり、だいたい17世紀(歴史を精査した訳では無いので間違っていたら済みません)には無くなっていた。ただし、西欧諸国では、戦争するよりコストの掛からない方法で、その後も奴隷調達は進む事にはなったのですが・・

一流役者と三流役者

プーチン大統領の事を沈着冷静に判断出来る聡明な大統領で有るとの評価は高く、それ故今回のウクライナ侵略はプーチン大統領の性格が変わってしまったのでは無いかと驚く人は多い。しかし、それは単に広大な国土を持ち、米国に次ぐ軍事力を持った国の大統領である故にプーチンも優れた大統領に違いないと思い込む幻想に過ぎない。

歴史的に最も優れた政治家を輩出してきた国は英国であろう(・・とは言っても全員が全員優れた政治家という訳ではないが)。かの国は最初は絶対的な王権と戦い民衆の権利を拡大して行き、その後は民主的な議会を発展させ、その中で互いに政策を戦わせて政治家同士が切磋琢磨して来た経緯がある。

一方ロシア(その後のソ連も含む)では、数百年に渡って民主主義というものが生まれたことも根付いたことも無い。権力の中枢にいる一部の人間が権力闘争と権謀術数を駆使して成り上がるのが常であった。そこには民主的に指導者が選出されるという術は無かった。従ってプーチン大統領のことを民主主義国の政治家と同じ目で見ることは大きな間違いであるのだ。

プーチン大統領は安倍首相との首脳会談に、巌流島の対決の宮本武蔵の様にわざと30分遅刻して来たり、犬嫌いのメルケル首相との会談に犬を連れて来たりして、度々相手のペースを乱すような小細工をしてきた。しかし、このような小細工を弄するのは所詮三流政治家である所以である。一流政治家なら堂々と意見で渡り合えば良いだけである。

今回のウクライナ侵略に対して「米国もイラクが大量破壊兵器を所持していると因縁を付けて派兵し、政権を転覆してしまったではないか!」と、言いたいと思う。米国のイラク派兵とどう違うのだ-と言われれば、大して違いは無いんだけどね・・(´Д`苦笑ι)。しかし、米国大統領とでは役者が違う。そして敵役のサダムフセイン大統領は悪役が似合う打って付けの役者であった。三流役者のプーチンが自分の役所も知らず、一流役者のゼレンスキー大統領相手に大立ち回りして、大きくコケたというところであろうか。

シリア傭兵の投入はウクライナにとってチャンス

ウクライナへの侵略を続けるロシアがシリアで傭兵を募集して投入するようです。

元々彼らはロシアへの憧憬や思想信条に共鳴し今回の侵略戦争に意義を感じて自発的に参加する義勇兵では無く、単に金目当てに参加するだけですから、ウクライナ側から武器を持って投降すればロシアの倍の金額を払うと呼びかければ、喜んでウクライナ側に投降するのでは無いでしょうか?更に、ウクライナ側に立って戦えば4倍の金額を支払うと言えば、ウクライナ側の傭兵になるのでは無いでしょうか?

4万の傭兵が小銃や敵弾を持ってウクライナ側に投降すれば、中国に軍事援助を求めるほど兵器に困窮しているロシアは兵器の不足となるでしょうし、更にウクライナ側に立って戦えば戦力バランスを逆転する事も可能でしょう。

ロシアは今回の傭兵の給与をルーブルでは無く、ユーロなどの外貨で支払うはずですが、ウクライナとロシアの間で傭兵の給与の吊り上げ合戦をすれば、先に音を上げるのは外貨調達に苦しむロシアでしょう。

宣伝工作がシリア傭兵に浸透すれば、仮に脱走が無かったとしても、金に釣られてウクライナ側に逃走するのでは無いかと不安にかられ、ロシア軍もシリア傭兵に対して疑心暗鬼となり戦闘どころでは無くなるのでは無いでしょうか。

第三次世界大戦迫る ~サインの出し方が世界大戦につながる

ロシアによるウクライナへの侵略が続いている。現在の状態は第二次世界大戦前のナチスドイツによる(第一次大戦後の)失地回復の動きに似ていると思う。ヒトラーはドイツ系住民が多数住むズデーテンラントの割譲をチェコスロバキアに迫り、ヨーロッパ全体に戦禍が及ぶことを恐れた英・仏・伊はヒトラーの要求を呑みチェコスロバキア抜きで割譲を決めてしまう(1938年 ミュンヘン会談)。しかし、ヒトラーの欲望は此処に止まること無く、翌年チェコスロバキアを解体し、保護領として併合してしまう。この際にも英仏は融和的態度で臨み、ヒトラーに対して何らアクションを起こさなかった。この事はヒトラーにこのまま失地回復を勧めても英仏は何もしないという誤ったサインを送る事となり、ヒトラーは1939年9月ポーランド侵攻を命じ、遂に第二次世界大戦の勃発となる。

第二次大戦の終了後チャーチルは、この大戦争は最初からヒトラーに対して毅然たる態度を示していれば起きることは無かったと回想している。

この歴史的事例は現在の独裁者プーチンによる、ソ連帝国解体後の失地回復の動きに似ているように見える。プーチンは2008年にグルジア(現在ジョージア)に侵攻したが、欧米は何もしなかった。更にウクライナのクリミア半島やウクライナ東部にロシア系住民が多く住むことを根拠に、2014年にクリミアをロシア領に編入し、ドネツク、ルガンスク州の一部を占拠するに至った。この際にも欧米はロシアに対して何らアクションを起こさなかった。これはプーチンに対してこのまま失地回復を進めても欧米は何もしないとの誤ったサインを送ることになり、ウクライナへ侵攻するに至った。

現時点においても欧米が正しいメッセージをプーチンに送っているように見えない。このまま優柔不断の態度を示して、毅然たるメッセージを発することが出来なければ、行く行く第三次世界大戦に繋がってしまう危険性がある。

ウクライナに旧式戦闘機を送っても意味は無いだろう・・

米国のブリンケン国務長官がポーランドの所有するロシア製(ソ連製?)旧式戦闘機をウクライナに送るように提案している。

制空権(航空優勢)の無い状況ではウクライナ軍の苦しい戦いが続くことは間違い無いので、戦闘機を送る提案は正しいのだが、旧式戦闘機を送っても意味は無いだろう。第二次世界大戦の頃ならパイロットの技量が空中戦の勝敗を左右したが、現在では空中戦の勝敗を決するのは搭載する電子機器の優劣になるからだ。

米国が日本に最新の電子機器を搭載した戦闘機を売らないように、警戒心の強いロシア(ソ連)が同じ性能の電子機器を搭載した戦闘機をポーランドに売っていたとは考えられない。更に年数が経って旧式化しているとなっては、離陸しても最新のロシア軍機に一方的に殲滅されるだけだろう。

戦争とテロ

国家には戦争する権利がある(と、考えられている)。個人が勝手に戦争を始めたら、それは戦争では無くテロである。テロなら国内法で裁くことが出来る。

今回のロシアのウクライナへの侵略が、国際法上の手順を踏んでいるのか疑問である。ウクライナの司法当局はプーチンをウクライナ人の大量殺人の教唆罪で訴追し、インターポールに国際指名手配出来るのではないか?

長期化する?ウクライナ侵略

ロシア軍のウクライナ進撃のスピードがおちている様です。恐らく当初計画では、6日間戦争(第三次中東戦争:1967年)の様に中国に配慮して北京オリンピックとパラリンピックの間隙に短期間で決着を付けたかったのでしょうが、戦略を変更してきていると思います。

ロシア軍は、最初に奇襲によりウクライナの空軍基地を無力化し、3方面から(内と外の違いはありますが)同時に侵攻するなど、6日間戦争を研究した可能性はあります。しかし、実際にはウクライナ軍の予想以上の頑強な抵抗に遭い、戦略を見直して短兵急な攻撃からじっくりと腰を落とした侵略作戦に変化させてきた様に見えます。外国からの武力干渉の心配は無いと判断されたので慌てる必要は無いと言うことでしょうか。

キエフに向かうロシア軍の車列が60キロ以上続いているとのことです。米国も偵察衛星から状況を注視しており、ある程度の情報はウクライナ側に伝えられていると思いますので、このキエフに向かうロシア軍列に攻撃を出来ないところを見ると、ウクライナ側は制空権(航空優勢)を最初の奇襲攻撃で喪失しており攻撃機による空襲を行う能力は、最早無いものと予想されます。またミサイルや長距離砲によるロングレンジでの攻撃能力も喪失しているものと考えられます。現在のウクライナ軍の主要兵器はカールグスタフ(自衛隊も使用している歩兵砲)やスティンガー(携帯型地対空ミサイル)等近接攻撃兵器しか無いのでは無いでしょうか。

ロシア軍は、じっくりと体勢を立て直した後、一機にキエフを包囲する可能性があります。戦車は市街戦にはむいておらず、いきなり戦車を投入するとモロトフカクテル(火炎瓶)の餌食になる恐れがありますので、第一段階としては遠巻きに包囲して、周囲から無差別にミサイルや長距離砲を打ち込み抵抗を封じて徐々に包囲の輪を絞め上げて行く。そして、第二段階として航空機により目視で抵抗拠点と成り得る場所を一つ一つ破壊して行く。最後に瓦礫の山と化した市街に戦車や地上部隊を投入して制圧する事が考えられます。

現在ロシア軍の食料補給が間に合っていないのでは無いかとの観測がありますが、10万の兵が飢えるより300万の市民が飢餓に瀕する方が先でしょうから、包囲したまま兵糧攻めにしてゼレンスキー大統領の投降を待つかも知れません。

現在欧米や日本など多くの国がロシア制裁に動いておりますが、これらの国の国民が包囲鐶の中に閉じ込められて人質とされてしまうと、それをネタに制裁に対して揺さぶりを掛けて来る恐れがありますので、一刻も早く脱出させる必要があるでしょう。

ロシアは核兵器を使用するか?

ウクライナへの侵略を続けるロシアが気化爆弾を使用したとのことです。気化爆弾は元々アメリカがベトナム戦争中に開発した爆弾で、従来の爆弾から懸絶した破壊力により”総ての爆弾の母”MOAB(Mother Of All Bombs)と呼ばれましたが、ロシアではこれを更に改良して破壊力を増した気化爆弾 FOAB(Father Of All Bombs)を持っているとの事です。

米国がベトナムで気化爆弾を使用した表向きの理由は、ジャングルの中にヘリコプターの発着場を造るためとの事でした。実際、強烈な爆風により樹木をなぎ倒し、ジャングル中に直径数十メートルの更地を造り、充分ヘリコプターの発着が出来た様ですが、本当の理由はジャングル中に潜むベトナム兵を殲滅する事でした(周囲の空気中の酸素が消失するため、運良く爆風を逃れたとしても窒息死します)。

この米国の気化爆弾より更に強力な爆弾を実際にロシアがウクライナで使用したとすれば、歯止めの効かなくなったロシア軍は、更に強力な核爆弾を使用する可能性はあると思います。