ロシアによるウクライナへの侵略が続いている。現在の状態は第二次世界大戦前のナチスドイツによる(第一次大戦後の)失地回復の動きに似ていると思う。ヒトラーはドイツ系住民が多数住むズデーテンラントの割譲をチェコスロバキアに迫り、ヨーロッパ全体に戦禍が及ぶことを恐れた英・仏・伊はヒトラーの要求を呑みチェコスロバキア抜きで割譲を決めてしまう(1938年 ミュンヘン会談)。しかし、ヒトラーの欲望は此処に止まること無く、翌年チェコスロバキアを解体し、保護領として併合してしまう。この際にも英仏は融和的態度で臨み、ヒトラーに対して何らアクションを起こさなかった。この事はヒトラーにこのまま失地回復を勧めても英仏は何もしないという誤ったサインを送る事となり、ヒトラーは1939年9月ポーランド侵攻を命じ、遂に第二次世界大戦の勃発となる。
第二次大戦の終了後チャーチルは、この大戦争は最初からヒトラーに対して毅然たる態度を示していれば起きることは無かったと回想している。
この歴史的事例は現在の独裁者プーチンによる、ソ連帝国解体後の失地回復の動きに似ているように見える。プーチンは2008年にグルジア(現在ジョージア)に侵攻したが、欧米は何もしなかった。更にウクライナのクリミア半島やウクライナ東部にロシア系住民が多く住むことを根拠に、2014年にクリミアをロシア領に編入し、ドネツク、ルガンスク州の一部を占拠するに至った。この際にも欧米はロシアに対して何らアクションを起こさなかった。これはプーチンに対してこのまま失地回復を進めても欧米は何もしないとの誤ったサインを送ることになり、ウクライナへ侵攻するに至った。
現時点においても欧米が正しいメッセージをプーチンに送っているように見えない。このまま優柔不断の態度を示して、毅然たるメッセージを発することが出来なければ、行く行く第三次世界大戦に繋がってしまう危険性がある。