ナチスドイツによるズデーテンラント併合とウクライナ抜きの和平提案

アメリカのトランプ大統領がロシアのプーチン大統領との間でウクライナ抜きでの和平合意を進めようとしているようだ。この動きを見ると第二次世界大戦の直前のナチスドイツによるズデーテンラント併合の教訓を思い出してしまう。

チェコスロバキア(スロバキアと分離して現在はチェコ共和国)の領域のズデーテンラントは歴史的にドイツ系住民が多く住む地域であった。ヒトラーはドイツ系住民の保護を名目にチェコスロバキアに割譲を迫った。この時、積極的に動いたのが英国の首相のチェンバレンであった。彼はここでヒトラーを怒らせたら戦争になってしまうと恐れ、チェコスロバキアの意志を無視して、ヒトラーと交渉してズデーテンラントの割譲を決めてしまう。(その後の歴史の流れでは、ズデーテンラントだけでなくチェコスロバキア全体が地図から消滅する)

当時チェコスロバキアは東欧有数の工業国であり、軍事装備も充実していた。一方ドイツは第一次大戦後のベルサイユ体制の影響で、軍事装備はまだ不十分で、戦争できる態勢に無かった。従ってドイツとチェコスロバキア間で戦端が開かれたとしても、ドイツの勝利は難しかったろう。結局ドイツは無血でチェコスロバキアの持つ大量の軍事装備を手に入れることが出来、次の第二次世界大戦に向けての準備が出来ることとなった。この時手に入れたチェコスロバキア製の戦車は敗戦のその日まで前線で戦うことになる。

ウクライナはソ連邦時代は農業だけでなく兵器開発に関しても大きな力を持っていた。現在欧米からの武器援助に大きく頼っているが、ウクライナ独自開発の兵器(例えばロシア黒海艦隊を封じた水上ドローンなど)も刮目するところが多い。

現在、ロシアはロシア系住民が多い東部4州とクリミアを占領状態においているが、この占領地域を固定した形で停戦が定められたら、ズデーテンラントの時の様に済し崩し的にロシアに侵食されウクライナという国が地図から消滅してしまう事態を恐れる。そして、ロシアという軍事国家が、ウクライナという優れた兵器開発国を手に入れた時、より凶暴な軍事大国になるのではないだろうか?これを成功体験として、更なる対外侵略を進める恐怖を感じる。

現在トランプ大統領はウクライナ停戦の実現によりノーベル平和賞を貰うつもりらしいが、前述のチェンバレン首相もドイツと融和して戦争を防いだ功績によりノーベル平和賞を貰うつもりであった。しかし、彼の功績は戦争の抑止ではなく、より大きなヨーロッパ全土を巻き込んだ大戦争の準備を手助けしたに過ぎない。個人の名誉欲だけで世界情勢を無視した無謀を許しては堪らない。

結局、戦争を終わらせたチャーチル首相はノーベル賞を受賞したが、それは”平和賞”ではなく”文学賞”であった🤣。

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